私たちの存在価値

存在価値というと大げさですが、私たちが今現在もしくは将来に渡って、シリウスキャットとして存在することがどの程度の意義があるのかを参考までにお示ししてみたいと思います。

存在価値というぐらいですから、存在することの価値、つまりシリウスキャットがあることでいったいいくらの経済的な価値があるのかということです。私たちは営利企業ではありませんので、一般的な企業が使う決算書や将来的に生み出すであろう収益を現在の価額に割り引くといった、投資家目線での企業価値算出には特に意義がありません。とはいうものの、公共的、公益的なサービスを行っているのでプライスレスです!といっては話が進みませんし、価値として表現するためには何らかの前提のもと具体的な数字で示す必要があります。では、どのような前提、つまり誰にとって、価値を見出せば良いのかを考えてみましょう。

シリウスキャットの使命は動物、その中でも主に「猫」と「人間」が未来にわたって、共に、幸せに生活ができる社会を造るまたはサポートすることです。つまり猫と人間の共生社会という視点で存在価値がどの程度あるのか考えてみます。そして、猫と言っても野良猫、飼い猫、地域猫と様々なスタイルがある中で、私たちが主眼としている地域猫の視点がより今回の趣旨に沿った内容かと思います。

存在価値を考える前に猫のテリトリーはどの程度の大きさかご存じでしょうか。飼い猫の場合は家の中で過ごしており、犬と違って散歩等はしないので、家の大きさがそのままテリトリーや活動領域になります。しかし、地域猫など主に外で生活する猫の場合、一般的には半径300mから500mと言われており、実際にシリウスキャット観測所にも、約500m先にある建物に所属する複数の猫が時折遊びに来ます。半径500mというとどの程度かといえば、住所表記でいうところの○○市○○町○丁目が概ね500m圏内とイメージすれば分かりやすいかもしれません。

動物保護団体では動物のために、サンクチュアリーと呼ばれる保護区域を創り、整備することがしばしば見られます。それらはシェルターと異なり、動物が安全に暮らせる場所(建物)と安全に行動できる場所(庭)で組み合わさっていることが一般的です。広さとしては農場をイメージすれば良いかと思われます。犬や猫、その他の動物が、理想的な環境で幸せに暮らせるよう整備されています。

では、それらの施設を住宅密集地や都市部に作るためにはいったいいくらかかるのでしょうか。シリウスキャットが現在本部を構える東京都昭島市に、理想的な環境を整えるにはどの程度の予算が必要か試算してみましょう。実際に徒歩と自転車で環境を確認し、さらにマップで測定したところ、猫のテリトリー内、つまり半径500m圏内であり、○○丁目の範囲には、約430の建物および敷地が存在しました。

次にそれらの不動産価格を計算してみます。不動産価格は時価かつ相対取引が基本ですが、土地の参考値としては路線価から推定できます。シリウスキャット本部周辺の相続税路線価は1㎡あたり165,000円(時価の0.8倍)、昭島市全体の固定資産税路線価は1㎡あたり132,000円(時価の0.7倍)となっており、それぞれ時価に割り戻すと1㎡あたり約190,000~200,000円となります。1区画当たり100㎡とすれば、約20,000,000円で売買がなされているということになります。以上が土地についてです。次に建物は新築から半世紀前に建てられたものも混在しており、算出は土地ほど単純ではありません。日本においては経年劣化とともに価値が目減りしていくと考え、減価償却という考え方のもと、一定額ずつ目減し、最終的には数十年かけて無価値となります。しかし、それでは計算ができないので、保険等による再調達価額等を参考に、約半分程度は価値が残っていると考え、1区画あたり約10,000,000円と仮定します。つまり、土地と建物を合計すれば、1区画あたり約30,000,000円ほどで取得が出来ることになります。これを先ほどのシリウスキャットを中心とした猫のテリトリー内、約430戸に乗じると、約129億円となります。

これの意味するところは、仮にシリウスキャットが自由に、つまり、シリウスキャットの理想を実現すべく、「猫」と「人間」が未来にわたって、共に、幸せに生活ができる社会を創るために、これらの敷地と建物を取得し、シリウスキャット王国ならぬユートピアを作り上げるためには、最低限129億円必要だということです。しかし、現実には用地買収はそう簡単ではありませんし、当然愛着を持って長年そこに暮らしている方からすれば、お金の問題ではなく、そもそも売るつもりはない方もいます。つまり、これらの広大な敷地を一括で取得したければ、もともと空いていて活用されていない土地を探すしかありません。

ここで、ふと疑問です。そもそもそれらは本当に買う必要があるのか?ということです。「猫」と「人間」が未来にわたって、共に、幸せに生活ができる社会を創るという目標の実現に、129億円のお金を払って用地取得をすることが本当にベストか?ということです。地域の住民とともに猫が共生し、あるいは地域の住民に猫が受け入れられ、行政とも連携し、様々なネットワークを活用し、自然とそこに猫が生きている、その環境さえ創れれば、シリウスキャット王国を無理やり作る必要はないのです。そして、現在、シリウスキャット観測所の周辺地域では、すでにそうなっているか、そうなりつつあります。シリウスキャットが昭島市に本部を構え、これらの環境を整備し、適切に運用していくこと、それは実質的にシリウスキャット王国があるのと同じ効果があるとも言えます。そして、経済学的な考え方で言えば、効果が同じであるならば、それを得るためのコスト、すなわち129億円のコストがかからない選択肢の方が優位性が高いのです。言い換えれば、シリウスキャットが昭島市に本部を構え、そこに存在し、適切に運用を行っていくことには129億円の経済的価値があるとも言えるのです。さらに、○○丁目だけで活動をしているわけではなく、あくまでも様々ある活動の中の一つとしてシリウスキャット観測所があるということも付け加えておきます。存在価値としてこの金額を多いとみるか少ないとみるかは人それぞれの感覚に委ねたいと思いますが、私たちとしては妥当な線としてこの金額程度の意義がある活動をこれからも実施していきたいと考えています。

もちろんこのデータに対する解釈は少々強引であり、私たちにとって都合の良い試算ともとれますが、経済的価値はあくまでもある前提で仮定した場合にどうなるのかを示す方法なので、当然前提や計算方法を変えれば、結果は変化します。そして、人によってはそのようなものは無価値であり、しかも換金可能なわけではありません。したがって、あくまでも参考情報となりますが、シリウスキャットのミッションという視点から、存在価値という形で具体的な数字を示すことにはそれなりの意味があるのではないかと思い提示してみました。

一般社団法人シリウスキャット

© 2222 一般社団法人シリウスキャット